日本語学校だと1年半から2年かけて、留学生の日本語を初級から中上級レベルまで引き上げます。「日本語の上達」というのが本質的な目的ですが、学習者(留学生)によっては「バイトさえできればいい」程度の学習欲だったり、あるいは「国立大学へ進学したい」とか「国立の大学院へ進学したい」というかなりハイレベルな日本語能力を期待している留学生もいます。
いずれにせよ、日本語学校は通過点に過ぎません。学習者のニーズに応じた対応をしながら、留学生を管理し、日本での生活の心得までをも伝えながら、専門学校や大学へと送り出すのを目的としています。
そうすると「日本語の上達」という目標の下で「生活指導」と「進学指導」という具体的な指導が必要となります。
「生活指導」では寮チェックまでする学校もあれば、アルバイト先や現在住んでいるところや電話番号の確認を毎月行う程度の学校もあり、様々です。一方の「進学指導」はほとんどの学校で同じようなことが行われています。面接指導とか作文指導といった試験に対応したものや、それ以前に、まずどこの専門学校や大学へ進学するかを絞り込むといった内容です。
「生活指導」は1年生のときから行われますが、「進学指導」は2年生になってから始まります。そして私にしてみれば不思議なくらい、日本語学校へ来ている留学生達は、進学先をあまり貪欲に調べません。「姉が東京にいるから」とか「恋人が名古屋にいますから」といった理由で進学先の場所を選び、「(とりあえず)コンピューター」とか「(とりあえず)観光」「(とりあえず)経済学部」といった感じで進学先を選ぶ留学生が非常に多いと感じます。中には「筑波の大学院しか行きません!」といった留学生もいたりしますが、稀です。
日本語学校で働いて留学生を見ていると、留学生の気分は次のように変化しているなぁと思います。まず、日本に来てワクワクしている「ハネムーン期」があります。ハネムーン期が続くのは、留学生によっては1か月しか続かない者もいれば、半年くらい続いているような者までいるように見えます。その後、カルチャーショックや理想と現実のギャップに溺れかかって鬱になりかかっているショック期と呼ばれる時期を抜け、やがて日本での生活に馴染みながら現実をより正確に把握していく回復期を迎え、やがて淡々と暮らし始める安定期へと向かっていっているように見えます。
そして年末の12月といえば、日本留学試験も終わり、日本語能力試験も終わり、いよいよ残すところ、進学先の受験だけとなっている安定期だけどふわふわしている微妙な時期です。日本人高校生で言うと、センター試験と2次試験の狭間といった感じでしょうか。
留学生はこれからバタバタと東京や大阪や福岡などの都市にある専門学校や大学を受験しては、やれ「緊張して失敗した!」とか「頭の中が真白で何も覚えていない!」とか言いながら日本語学校から旅立っていきます(中には「卒業しても寮に住まさせていただいてもいいですかー」などという輩もおりますが…)。
ともあれ11月までの、日本留学試験対策や日本語能力試験対策をしている頃までは「攻めている」感じがあるし、留学生も安定期に入っていて授業もやりやすく楽しいのですが、これからは徐々に現実を見つめながら別離を意識し始める、ちょっと切ない時期となります。